ボドゲレビュー『SETI / セティ:地球外知的生命体探査』辛口解説!

ボドゲレビュー『SETI / セティ:地球外知的生命体探査』辛口解説! エリアマジョリティー(陣取り)

本記事では、イギリス発の独立系ボードゲームレビューメディア「Shut Up & Sit Down(SU&SD)」によるレビューをもとに、2024年の注目大作『SETI:地球外知的生命体探査(SETI: Search for Extraterrestrial Intelligence)』をご紹介します。

レビューを担当したのはSU&SDのMatt Lees(マット・リース)氏です。元ゲームジャーナリストとしてのキャリアを持ち、独自のユーモアと鋭い批評眼でゲームを語るスタイルに定評があります。SU&SDはパブリッシャーからの広告収入を受け取らず視聴者支援のみで運営する独立系メディアとして、業界内で特に高い信頼を誇ります。

はくめー
はくめー

SU&SDらしい辛口でフェアな評価です。序盤の「じわじわ育てる」感と、エイリアン登場後の盤面変化の興奮は本物ですよ!

結論:良いゲームだが、コレクションに「残す」理由を見つけられなかった

SETIは良いゲームです。何度も遊んで楽しめたし、そのこと自体に文句はありません。でも「このゲームを持ち続ける理由」を、プレイを重ねるほどに見失っていきました。

エイリアンが登場する驚きと興奮は本物です。でもエイリアンはランダムなセットアップの代わりに「もっとかっこいい見せ方」で提示されているだけで、ゲームそのものの骨格はシンプルなポイントサラダ系ユーロです。そのベースの部分が、他の似たジャンルのゲームほど個性的でも、インタラクションが豊かでもない。それが正直な評価です。

概要

参加人数1〜4人
プレイ時間40〜160分
対象年齢14歳以上
発売時期2024年
メカニクスエンジンビルディング、ハンドマネジメント、エリアコントロール、セットコレクション
ゲームデザイントマーシュ・ホレク(Tomáš Holek)
SETI ボックス

画像引用元:Czech Games Edition公式ショップ「SETI: Search for Extraterrestrial Intelligence」ページ

SETIは、宇宙探索機関として太陽系内を探査しながら地球外生命体の証拠を集める、1〜4人用の重量級ユーロゲームです。全5ラウンドを通じて探査機の打ち上げ・惑星着陸・スキャン・データ処理などのアクションを組み合わせ、3種類の証拠(オレンジ・パープル・ブルー)を集めることで「エイリアン発見」という共通イベントを引き起こします。

SETI セットアップ

手番には小冊子サイズのアクションメニューから行動を選びます。探査機を宇宙空間に打ち上げて動かす、惑星や衛星に着陸させる、望遠鏡でスキャンしてエリアコントロールを争う、集めたデータをコンピューターで処理して得点化する、などが主なアクションです。エリアコントロールのスキャンでは他プレイヤーと直接競い合い、パープルの証拠が得られます。コンピューター処理ではブルーの証拠が手に入り、これら3色の証拠を全員で揃えるたびにエイリアンが登場します。

SETI カード

ゲームには5種類のエイリアンが入っており、セットアップで2種類だけが選ばれます。どのエイリアンかはゲーム開始まで非公開で、登場したときに新しいカード群・コンポーネント・ルールが加わります。200枚以上のカードはすべて現実の宇宙技術・プロジェクト・発見を基にしており、エイリアンカードだけは架空のものですが同じフォーマットで作られています。

感想

序盤の「何もできない」感と、後半の爆発的な解放感

序盤のSETIは、お金が少なく、手が届くアクションが少なく、やりたいことに対してリソースが全然足りません。最初の数ラウンドは制約の中でもがく「ランニングフェーズ」で、3時間ユーロゲームの序盤によくある、あのじっくりした立ち上がりです。

でも後半になるとそれが弾けます。お金が回り始め、カードのコンボが連鎖し、1ターンがどんどん長くなる。この「からっぽから溢れるまで」の体験の対比が、このゲームの気持ちよさの核心です。カードの多用途性も見事で、どんなカードも「コストを払ってアクション強化」「破棄してお金かエネルギーにする」「スキャンに使う」「タックして収入源にする」と4〜5通りの使い方があります。手元に「完全に死んだカード」がほぼ存在しないのは、丁寧なデザインの証拠です。

エイリアンの登場——驚きと、それを超えられなかったもどかしさ

エイリアンが登場する瞬間は本当に楽しいです。箱を開けるまでどの2体が選ばれているかわからない。登場したら新しいカードとコンポーネントが展開されて、ゲームに突然新しい層が加わる。「次は何が来るんだろう」というワクワクがゲームを通じて続きます。

5種類のエイリアンはどれもテーマ的に面白く、ゲーム的にも機能しています。化石の残った岩、遠くの星からの電波信号、惑星間を移送される虫の群れ……奇抜すぎず、でも十分に個性的です。ただ遊び重ねると、エイリアンは「よりかっこいい見せ方のランダムセットアップ」であることが見えてきます。ゲームプレイの根本を変えるというより、どのエリアに価値が生まれるかを変える仕組みです。それ自体は機能しているのですが、何度も遊ぶほどの「また来い」感を与えてくれるほどではありませんでした。

2人がベスト、3〜4人は盤面が混沌としすぎる

2人プレイのSETIは読みやすくて引き締まっています。相手の動きが把握できて、小さな優位を積み上げる戦術的な面白さがある。プレイ時間もゲームサイズのわりにテンポよく進みます。

3〜4人になると話が変わります。問題は中央の回転する太陽系ボードです。プレイヤーが技術を研究したときや誰かがパスしたとき、そしてカードの効果でもボードが回転します。2人なら「あ、そろそろ回転しそうだな」と読めますが、3〜4人では自分のターンとターンの間に何度もボードが動いて、計画が完全に崩れることが頻発します。しかも「意図して動かす」のではなく「普通にゲームしたら結果的に動いた」という形でそれが起きるのが、特に気になりました。意図のないインタラクションが一番たちが悪い。

「エイリアン登場前」が少し退屈になりやすい構造

エイリアンが登場するまでの序盤、どのエイリアンが来るかわからない状態でどう動くべきか——という問いへの答えは「あまり特定の方向に寄りすぎないこと」になります。対応力を残した汎用的な立ち上がりが安定します。

でもそれは、序盤の選択が「どんなエイリアンにも対応できる布石」に収束しやすいということでもある。エイリアンの秘密というミステリーが、皮肉にも序盤の戦略的自由度を若干狭めているという逆説があります。知らないから対応幅を広めておく、という合理的な判断が、ゲームの奥行きを少し薄くしてしまっています。

コレクションに「残す」理由——他のゲームと比べたとき

繰り返しになりますが、SETIは良いゲームです。何度か遊んで楽しかったのは本当のことです。でも棚に残るかというと、正直迷います。同じ大きなユーロゲームのカテゴリで、もっと個性的なアクション設計のゲームがある。もっとインタラクションが意図的で面白いゲームがある。

宇宙探索のテーマが刺さる人、スコアを追いかけて効率を磨き続けることが好きな人、CGEの作品が好きな人には十分すすめられます。ただ「探索テーマ×軽めの推理ゲームが好き」なら「サーチフォー」シリーズ(Planet X・Lost Species等)が、「回転ボード」に惹かれるなら最後の星の夜(Sol: Last Days of a Star)がより尖った体験を届けてくれるかもしれません。

ABOUT REVIEWER

Shut Up & Sit Down(Matt Lees)

2011年創設のイギリス発ボードゲームレビューメディア。現在の登録者数45万人超、再生回数1億回を誇る業界最大規模の独立系チャンネルのひとつ。パブリッシャーからの広告報酬を受け取らず、視聴者支援のみで運営を続ける姿勢と、ドライなユーモアと鋭い批評を融合させたスタイルで高い信頼を獲得している。

レビュー担当:Matt Lees(Shut Up & Sit Down)

Shut Up & Sit Down(YouTube / shutupandsitdown.com)

元ゲームジャーナリストとしてキャリアを積んだ後SU&SDに参加。独自のユーモアと映像センスを持ち、ゲームのデザイン的な強みと弱みを丁寧に分解するレビュースタイルに定評がある。今回は「何度も遊んで楽しんだが、コレクションには残らない」という正直な評価を下している。

▶ Shut Up & Sit Down(YouTubeチャンネル)

▶ shutupandsitdown.com(公式サイト)

コメント

タイトルとURLをコピーしました