Shut Up & Sit Downのレビュー「Arcs is 2024’s Best New Board Game」をもとに、宇宙戦略ゲーム『アークス』の魅力を整理します。トリックテイキングと艦隊戦、得点目標の宣言、攻撃的な駆け引きが混ざった、かなり濃い作品です。

アークスは、宇宙戦略の重さをカードゲームのテンポで動かす作品です。毎手番が短いのに、判断はずっと鋭く、遊ぶほど新しい発見があります。
結論
アークスは、近年のボードゲームの中でもかなり強烈な完成度を持つ作品です。宇宙を舞台にした勢力争いなのに、中心にあるのはトリックテイキングです。手札6枚だけで移動、建設、戦闘、影響力、得点目標の宣言までやりくりするので、毎ラウンドが小さな難問になります。
しかも、その難問が重苦しくありません。手番は短く、他の人の一手にもずっと意味があります。誰がどのスートを持っていそうか、誰が次に主導権を握るのか、どの野望を宣言するのかを見続ける必要があり、待ち時間までゲームの一部になります。
かなり攻撃的で、ダイスの揺れもあります。穏やかに自分の盤面だけを育てたい人には刺さりにくいかもしれません。ただ、そのリスクと荒さがあるからこそ、負けそうな状況からの逆転や、思い切った襲撃が強烈な記憶になります。アークスは、きれいに計画を積むゲームというより、目の前の好機をつかみ取るゲームです。
概要
| 参加人数 | 2~4人 |
| プレイ時間 | 60~120分 |
| 対象年齢 | 14歳から |
| 発売時期 | 2024年~ |
| メカニクス | エリアマジョリティ、ダイスロール、エリア移動、ハンドマネージメント、トリックテイキング、直接攻撃、プレイヤー別固有能力 |
| ゲームデザイン | コール・ウェーレ(Cole Wehrle) |

画像引用元:Arcs – Leder Games
アークスは、宇宙を舞台に艦船を動かし、都市や宇宙港を建て、資源を集めながら得点を競う戦略ゲームです。ゲームは5つの章で進み、各章では6枚のカードを使って行動します。
カードにはスート、数字、使えるアクションがあり、出し方によって移動、建設、戦闘、徴税、宮廷カードへの影響力などが決まります。最初にカードを出すプレイヤーは行動を広く使えますが、後続のプレイヤーは同じスートで上回るか、行動を1つに絞って対応します。

得点源となる「野望」はプレイヤーが宣言し、全員共通の目標になります。宣言するタイミングが早いほど得点の可能性は広がりますが、相手にも同じ目標を狙う時間を与えます。
戦闘では複数のダイスを使い分け、相手の艦船を壊すだけでなく、資源やカードを奪うこともできます。手札、主導権、盤面、資源、ダイス結果を見ながら、その章で最も有利な動きを探していくゲームです。
感想
手札6枚がずっと悩ましい
アークスの基本は、各章で配られる6枚のカードです。カードにはスートと数字があり、移動、建設、戦闘、影響力、確保、徴税などの行動につながります。ただし、カードを持っているからといって、いつでも全部の行動を使えるわけではありません。
リードできればカードのアクションをしっかり使えますが、後から出す側は制限されます。同じスートで高い数字を出して上回るか、伏せてリードカードの行動を1つだけ借りるか、別スートで自分のカードの行動を1つだけ使うか。この選択だけで、手札の価値が毎回変わります。
低いカードは弱いだけではなく、リードできれば行動数が多くて強いです。高いカードは主導権を取りやすい反面、行動数は少なめです。良い手札、悪い手札というより、その場でどう使えるかを探す手札になっているのが面白いです。
野望の宣言がゲームを荒々しく動かす
得点は、あらかじめ固定された目標を淡々と達成する形ではありません。プレイヤーがリードしているときに、カードの行動価値を捨てて「野望」を宣言します。燃料や素材を集める、遺物やサイオニックを持つ、戦闘でトロフィーを取る、捕虜を得る、といった得点軸がそこで初めて全員の目標になります。
これがとても良いです。自分が勝てそうな野望を宣言しても、得点するのは自分だけではありません。宣言した瞬間に全員がその目標へ走り出します。早く宣言すれば点は大きいですが、主導権を失いやすい。遅らせれば安全に見えて、そもそも宣言する機会を失うかもしれない。この圧が常にあります。
短い手番なのに盤面は濃い
宇宙戦略ゲームというと、長い手番でじっくり計画を実行する印象があります。アークスはかなり違います。手番は短く、カードゲームのように次々進みます。それでも、艦隊の移動、都市や宇宙港の建設、資源の徴税、戦闘、宮廷カードの獲得が絡み合うので、盤面の密度は高いです。
特に良いのは、他の人の手番を見ている時間が退屈になりにくいところです。誰がどのカードを出したか、どのスートが切れていそうか、次に誰が主導権を持つのか。そこを見ていないと、自分の一手の価値も変わってしまいます。大きな戦略ゲームなのに、集中感はクラシックなカードゲームに近いです。
戦闘は攻める側が気持ちいい
戦闘は、攻撃側がかなり主導権を持ちます。どのダイスを振るかを選び、出た結果をどう割り振るかも攻撃側が決めます。小さく削るのか、大きなダメージを狙うのか、相手の資源やカードを奪いに行くのか。攻め方に幅があります。
ただし、攻撃すれば何でも得というわけではありません。相手の都市を壊すと、自分が持っている同種の資源を失うような重い結果もあります。アークスの戦闘は、ただ殴るだけではなく、どこまで踏み込むかを自分で背負う仕組みになっています。
ダイスの揺れがドラマを作る
ダイス運はしっかりあります。勝ちそうだった側が安全だと思っていたら、最後の襲撃でひっくり返ることもあります。この揺れを苦手に感じる人はいると思います。きっちり積み上げた優位が、ダイスで崩れる瞬間もあるからです。
ただ、アークスではその揺れが単なる雑音ではなく、ゲームの熱になっています。攻める側はダイスが走ることに賭け、守る側は走らないことに賭けます。どちらもリスクを受け入れているので、成功しても失敗しても場面が強く残ります。
宮廷カードとリーダーが毎回の形を変える
宮廷カードは、ゲームごとの方向性を大きく変えます。資源を別の形に変えたり、主導権を取りやすくしたり、相手のカードを奪ったり、捕虜を得たりと、少ないテキストで強い個性を出してきます。大きな技術ツリーを置かなくても、数枚のカードだけで自分の陣営の性格が変わるのが見事です。
さらにリーダーと伝承を入れると、最初から非対称性が加わります。強い長所と明確な短所を持つリーダーに、伝承カードを組み合わせることで、毎回かなり違う戦い方になります。基本ゲームだけでも濃いのに、ここまで入れるとリプレイ性は相当高いです。
気になる点もはっきりある
アークスは、やさしいゲームではありません。得点のためには誰かが足りなくなる状況を作る必要があり、資源も盤面もかなり奪い合いになります。2人プレイでもしっかり遊べますが、かなり直接的で厳しいぶつかり合いになります。
また、最初は手札の制限が窮屈に感じます。やりたいことがあるのに、カードの出し方や主導権の関係でそのまま実行できない場面が多いです。ただ、その窮屈さこそがアークスの核でもあります。自由に何でもできるゲームではなく、限られた手札から一番鋭い道を探すゲームです。
アークスはどんな人に合うか
アークスは、戦闘や妨害を含む濃いインタラクションが好きな人にかなり合います。長期計画を完璧に通すよりも、変化する状況に合わせて手を組み替えるのが好きな人向けです。トリックテイキングの読み合いと、盤面戦略のぶつかり合いの両方を楽しめるなら、かなり特別な体験になります。
一方で、平和に拡大して自分のエンジンを育てたい人、ダイスの振れ幅をできるだけ避けたい人には強すぎるかもしれません。アークスは、安定した箱庭ではなく、毎回どこかが燃え上がるようなゲームです。その火花を面白がれるなら、長く遊び続けられる一作です。

このゲームは↓の記事でもオススメされています!



コメント