ボードゲームレビューチャンネル「Actualol」を主宰し、数多くの作品を紹介してきたジョン・パーキスさんのレビューをもとに、ディナップ(DNUP)の魅力を詳しくまとめます。ジョンさんは本作を「ここ数年で最高の新作カードゲーム」と高く評価しています。
カードを出し切る分かりやすさの中に、両面カードを育てる戦略とプレイヤー同士の攻防が詰まった作品です。軽いカードゲームが好きな人はもちろん、もう少し考えどころが欲しい人にも向いています。

負けて戻ってきたカードが反転し、次の組み合わせにつながるのが面白いカードゲームです。8歳から遊べる分かりやすさと、手札を育てる戦略性を両立しています。
結論
ディナップ(DNUP)は、誰とでも遊べる手軽さと、何度も試したくなる戦略性をちょうどよく両立したカードゲームです。カードを出し切るだけなので目的はすぐ理解できますが、両面の数字を利用して手札を整える仕組みが、単純な早出しゲームでは終わらない面白さを生んでいます。
ゲームに慣れていない人にも教えやすく、それでいて普段からボードゲームを遊ぶ人もしっかり考えられます。3人、4人、5人で楽しく遊べるほか、少し変則的な2人用ルールもきちんと機能します。パブ、旅行、ゲーム会の合間など、持ち出す場面を選びません。
終盤にカードを取り返し合う展開が続き、決着まで少し時間がかかることはあります。それでも全体のテンポは良く、選択肢がありながら大きな長考を求められません。軽量カードゲームとして、非常におすすめしやすい作品です。
ディナップ(DNUP)の概要
| 参加人数 | 2~5人 |
| プレイ時間 | 15~20分 |
| 対象年齢 | 8歳以上 |
| 発売時期 | 2025年 |
| メカニクス | ハンドマネージメント |
| ゲームデザイン | 梶野 桂(Kei Kajino) |

画像引用元:dnup公式サイト
ディナップ(DNUP)は、手札のカードを最初に出し切ることを目指すカードゲームです。カードには上下に異なる数字があり、1枚だけ、または同じ数字をそろえた複数枚の組として、自分の前へ出します。出した組が次の自分の手番まで残れば、そのカードはラウンドから取り除かれます。

場に同じ枚数の組がある場合は、それより大きな数字でなければ新しい組を出せません。より大きな組を出されると、負けた組の持ち主はカードを手札へ戻します。その際にカードを上下反転させるため、以前とは違う数字として使うことになります。弱かったカードが強くなったり、新しい組を作れるようになったりするのが特徴です。

直前に出された組を必ず上回る必要はありません。3枚組が強すぎるなら、1枚、2枚、4枚のいずれかを出し、別の枚数の競争へ移れます。また、自分の組を出す代わりに、ほかのプレイヤーが出した組へ同じ数字のカードを1枚追加することも可能です。追加によって別の組を上回れば、その持ち主にカードを回収させられます。
出せるカードがないときは、何もせずにパスするのではなく、手札全体を反転させます。最初に手札をなくしたプレイヤーは2点、続く2位は1点を獲得し、誰かが4点を集めるまでラウンドを繰り返します。1位を逃しても2位を目指せるため、最後まで勝負に参加できます。
ディナップ(DNUP)の感想
負けても手札が成長するのが気持ちいい
一番面白いのは、出したカードを相手に上回られても、ただ元の状態へ戻るわけではないところです。カードを反転させて手札へ戻すため、低かった数字が大きくなり、次は強い組として使える可能性があります。
たとえば、同じ数字のカード2枚を出した時点で、反転後には手札の別の1枚と同じ数字になることが見えている場合があります。あえて相手に負けることを期待して出し、戻ってきた3枚で強力な組を作るわけです。
普通の早出しゲームでは、出したカードを戻されると単純な後退に感じます。ディナップ(DNUP)では、失敗しても次の作戦へつながります。手札が少しずつ変化し、自分で特別な組み合わせを作っている感覚があるので、狙いどおりに完成したときはかなり満足できます。
手札作りと対人戦を同時に楽しめる
ディナップ(DNUP)では、実質的に2種類のゲームを同時に進めています。ひとつは、カードの表裏を見ながら手札を理想的な形へ整えるゲームです。もうひとつは、ほかのプレイヤーの残り枚数を確認し、誰の組を上回るべきか考える対人戦です。
自分の手札だけを見ていると、あと少しで上がりそうな相手を止められません。残り2枚のプレイヤーが組を出したら、そのカードを手札へ戻し、勝利までの時間を稼ぎたいところです。自分のカードを減らすことと、先に上がりそうな相手を妨害することの優先順位が毎回変わります。
予定どおりにいかない展開も楽しいです。反転後の強い組を作るつもりで弱いカードを出しても、誰にも上回られず、そのまま処理されることがあります。カードは減ったのに、残された1枚をどう処理するかという新しい問題が生まれます。計画が崩れても別の手を探せるため、失敗がゲームを止めません。
組の枚数を変えて戦いを避けられる
ディナップ(DNUP)では、同じ枚数の組だけが競合します。3枚組に勝てなくても、1枚、2枚、4枚の組を出せます。つまり、場では複数の競争が同時に進んでいます。勝てない相手と正面からぶつかる必要はなく、自分が勝てる枚数の競争を選べます。この自由度によってカードを出せる機会が増え、ゲームの流れが止まりにくくなっています。
大きな組を計画的に作る価値も十分にあります。4枚組は同じ枚数で上回られにくいため、次の手番まで残る可能性が高くなります。カードを反転させ、同じ数字を集める準備が報われる瞬間です。
相手の組への1枚追加が攻防を広げる
自分で新しい組を作るだけでなく、相手の組へ同じ数字のカードを1枚加えられる仕組みも秀逸です。たとえば、2枚の「5」に1枚加えて3枚組にすれば、場にある3枚の「4」を上回れます。「4」の持ち主はカードを反転させて回収しなければなりません。
この行動によって、一時的な協力関係が生まれます。共通の脅威になっているプレイヤーを止めるために別の相手を助けながら、最終的にはその相手とも勝利を争います。直接的な交渉が中心ではありませんが、カードの置き方から自然に共闘と裏切りが発生します。
さらに、組へ追加したカードは自分のところへ戻りません。使いにくい弱いカードを処分しつつ、相手の競争へ影響を与えられます。その組が後で負ければ、追加した不要なカードまで組の持ち主が引き取ることになります。手札整理と妨害を1回の行動で行える、とても気持ちのいい選択です。
長考が少なくテンポよく進む
ディナップ(DNUP)には複数の選択肢がありますが、ゲームを止めるほど大きな決断はあまりありません。自分の手番が終わった直後から、場の状況を見て次に出したいカードを考えられます。
同じデザイナーによる「SCOUT」にも、手札を育てる戦略的な面白さがあります。しかし、取るカードや手札へ加える位置を考える場面が多く、プレイヤーによっては流れが途切れやすく感じます。ディナップ(DNUP)は同じような戦略の手応えを、より短く滑らかな進行で味わえるのが魅力です。
カードゲームとしての賢さは十分にありながら、難しくなりすぎていません。初心者向け作品より少し深く、趣味性の高いラダークライミング系作品ほど重くない、ちょうど中間の位置にあります。
2位にも意味があるので最後まで楽しめる
ラウンドで誰かが最初に上がっても、残ったプレイヤーは2位を決めるまで続けます。1位は2点、2位は1点を獲得するため、わずかな差で1位を逃しても、それまでの努力が無駄になりません。
毎回2位を取るだけでも、4点に到達してゲーム全体に勝つ可能性があります。先に上がった人だけが満足して終わるのではなく、ほかのプレイヤーにも次の目標が残ります。下位のプレイヤーが追い上げて2位を奪う逆転も起こり、最後まで見どころがあります。
終盤の膠着は少し気になる
気になるのは、全員の手札が少なくなった終盤です。最後のカードを処理しようとして互いの組を上回り続けると、反転したカードが相手を再び上回れる形になり、同じような攻防が繰り返されることがあります。
カードを出しては戻す流れから抜けにくい、いわば「終わらない循環」に入ると、ラウンドの決着まで少し時間がかかります。ただし、これは常に起きる問題ではありません。出せない場合も手札を反転させる行動があるため、何もできずに待つだけにはなりにくいです。
初心者と経験者をつなぐ理想的なカードゲーム
ディナップ(DNUP)は、カードを出し切るという誰でも理解しやすい土台を持ちながら、現代的なカードゲームの戦略を自然に体験できます。初心者は目の前のカードを出すだけでも楽しめ、経験者は反転後の数字や相手の残り枚数まで見ながら計画できます。
ゲームに慣れていない家族や友人と遊んでも難しすぎず、自分自身は手札作りの深さを楽しめます。ここから、より複雑なゲームへ進む入口にもなります。それでいて、必ずしも次のゲームを必要としないほど完成度が高く、何度でもこの作品へ戻りたくなります。
旅行へ持っていく、パブで遊ぶ、ゲーム会の合間に出すなど、使える場面が非常に多いです。簡単に教えられ、人数の幅が広く、短時間でも満足できます。遊ぶ相手や場所を選ばず、毎回わくわくできるカードゲームです。
レビュアー紹介
ジョン・パーキス(Jon Purkis)
ボードゲームチャンネル「Actualol」の主宰者・レビュアー。幅広いボードゲームを遊び、分かりやすさやテンポ、遊ぶ相手と場面まで含めた実用的な視点で作品を紹介しています。
ディナップ(DNUP)については、手札を育てる戦略、止まりにくい進行、初心者と経験者が一緒に楽しめるバランスを高く評価し、「ここ数年で最高の新作カードゲーム」と結論づけています。

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