本記事では、ボードゲームのルール解説動画で世界的に知られるYouTubeチャンネル「Gaming Rules!」によるレビューをもとに、進化テーマのエリアコントロールゲーム『ドミナント・スピーシーズ(Dominant Species)』の魅力をご紹介します。
レビュアーのPaul Grogan(ポール・グローガン)氏は、1980年代からボードゲームを愛し、2015年にIT職を離れてGaming Rules! Limitedを設立。ルールブックの制作・改善やHow-to-Play動画を専門とし、業界からも依頼を受ける数少ないプロのゲーム教育者です。自身はダイス運のないユーロゲームを好む「純粋なユーロゲーマー」でありながら、このゲームに9〜9.5点という高評価を与えている点がこのレビューの一番のポイントです。

「ユーロゲーマーなのにウォーゲーム出版社の作品を絶賛する」という意外な組み合わせが、このレビューの面白さです。コンフリクト嫌いのPaulが9〜9.5点をつけた理由、気になりますよね。
結論:9〜9.5点の傑作コンフリクト(プレイヤー間の衝突)ゲーム
このゲームは9点、場合によっては9.5点です。
自分はユーロゲーマーで、コンフリクトが激しいゲームはそもそもあまり好きじゃないですが、このゲームは違いました。戦いはダイスじゃなくて、計画と配置で決まる。そこがユーロゲームと同じ感覚で遊べる理由です。プレイ時間はかかりますが、その時間を使う価値は間違いなくあります。
概要
| 参加人数 | 2〜6人 |
| プレイ時間 | 120〜240分 |
| 対象年齢 | 14歳以上 |
| 発売時期 | 2010年(第6版:2022年) |
| メカニクス | ワーカープレイスメント、エリアコントロール、エリアマジョリティ |
| ゲームデザイン | チャド・ジェンセン(Chad Jensen) |

画像引用元:Gamer’s HQ「Dominant Species (EN)」ページ
舞台は9万年前の地球。迫り来る氷河期を前に、哺乳類・爬虫類・鳥類・両生類・クモ類・昆虫類の6つの動物グループが生き残りをかけて争います。各プレイヤーはいずれか1種の動物を担当し、ゲーム終了時に最も多くの勝利点を持つ種が「支配種(ドミナント・スピーシーズ)」として勝利します。

ゲームの核心はワーカープレイスメントです。各ラウンドの計画フェーズで、プレイヤーは順番にアクションポーンをボード左側の「アクションエリア」に置きます。適応(エレメント獲得)・繁栄・移動・競争・氷河化など様々なアクションがあり、すべてのポーンが置かれたら上から順に実行フェーズへ移ります。どのアクションを先に取るか、相手より前に重要なスペースを押さえられるかが勝負の肝です。

「支配」の判定が独特です。あるヘックスに自分のコマが一番多くても、それだけでは支配できません。各動物は「適応しているエレメント(食料や環境要素)」を持っており、そのヘックスの周囲に自分の適応エレメントが多いほど支配力が高くなります。コマ数と支配は別物で、この二層構造が初心者には少し混乱しますが、慣れると面白さの根幹になってきます。ラウンドごとに支配しているプレイヤーが「ドミナンスカード」を使える権利を得て、これが大きく盤面を動かします。
感想
ユーロゲーマーがなぜGMTのゲームにハマったのか
GMT Gamesといえばウォーゲームの老舗で、正直なところ「自分向けじゃないかも」と思っていました。コンフリクト要素が強いし、ダイスで戦闘を解決するゲームはあまり好きじゃない。でもこのゲームはまったく違いました。
戦闘の結果は、すべて事前の計画と配置で決まります。相手を攻撃する「競争」アクションも、「そのエリアからコマを1個取り除く」というシンプルなもの。本当に激しい争いが起きるのはドミナンスカードを通じてで、これがユーロゲームのワーカープレイスメントと組み合わさることで「コンフリクトが苦手な自分でもハマれる」仕上がりになっています。
ドミナンスカードは「理不尽」じゃなくて「計画の対象」
初めて遊ぶとき、ドミナンスカードの強さに驚く人が多いです。火山が噴火してコマが全滅したり、大地が荒廃して得点源がまるごと消えたり。「なんだこれ、理不尽すぎる」と感じるかもしれません。
カードはすべてラウンド開始時に表向きで公開されています。何が起きるかは全員に見えている。火山が出るなら、先にドミナンスアクションを取ってそのカードを自分で使えばいい。コマを一か所に集中させたまま火山の隣で構えているなら、それは自分の読み違いです。
初プレイの前に「このカードはゲームを大きく動かすから、必ず事前に何が出るか確認して対策を立てて」と伝えておけば、理不尽に感じることはぐっと減ります。
プレイ時間は長い。でもその長さに納得できる
正直に言います。4人で遊ぶと平均4時間、6人だと4時間半〜5時間かかります。箱の表記より長くなることが多い。「2〜4時間って書いてあったのに」と感じる方もいるかもしれません。
でも、この時間が苦にならないのがこのゲームの不思議なところです。「あの場面どうすればよかったんだろう」「次はこの動物で試してみたい」という余韻が、プレイが終わっても残ります。それだけゲーム中の判断が濃密で、後から振り返ると「もっとうまく動けた」と思える場面が必ず出てくる。長いゲームに投資する価値があるかどうかで言えば、あります。
ルールブックとコンポーネントは本当によくできている
GMTのルールブックは総じて質が高いことで知られていますが、このゲームもその例にもれません。セクション番号が細かく振られた昔ながらのウォーゲーム式ではなく、現代的で読みやすい構成になっています。動画やBGGを調べなくても、ルールブックだけで遊び始められます。
コンポーネントも優秀です。木製コマの質、厚みのあるボードタイル、見やすいカードデザイン——第2版以降でアートワークが一新されてさらに良くなりました。個人的には初版のアートが好みでなかったため、自分でヘックスタイルを作り直して「ブリングアップ」していたこともありました。今は改版されたものを使っていますが、それでも手作りタイルの方が愛着があって捨てられずにいます。
気になる点:エレメントトークンの引き運
ほぼ完璧なゲームにひとつだけ引っかかりがあるとすれば、毎ラウンド袋から引いて盤面や各エリアに配置されるエレメントトークンです。
プレイヤーが選んだ動物は特定のエレメントと相性がよく、そのエレメントが多いほど有利になります。でも、袋から引かれるエレメントは毎ラウンドランダムです。自分の動物が必要とするエレメントがまったく出てこないラウンドが続くと、かなりきつい。
対処法はあるし、見えているカードへの対応でカバーできる部分も多いのですが、それでも「今日は引きが悪かった」という感覚は残ります。これだけが、このゲームを10点満点にできない唯一の理由です。9〜9.5点にとどめているのはここだけです。
コンフリクトが苦手なユーロゲーマーへ
もしこのゲームが「気になるけど、コンフリクトが激しそうで踏み出せない」というリストに入っていたとしたら、ぜひ一度試してください。ユーロゲームの計画と読み合いが好きなら、このゲームは絶対に刺さります。
友人のGraeme Charltonは「マルチレイヤーのエリアコントロール、常に変化するボード状態、プレイヤー間の激しい駆け引き、テーマとメカニクスの完璧な一致、そして複雑さのわりにシンプルなルール——リリース直後から彼のナンバーワンで、それは変わらないそうです。まったく同じ気持ちです。

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