本記事では、購入者目線の率直な評価で知られるYouTubeチャンネル「BoardGameCo」のAlex Radcliffe氏と、協力ゲーム専門配信「Professor Meg」のMeg氏によるコラボレビューをもとに、レガシー式タイル配置ゲーム『マイシティ(My City)』をご紹介します。
Alex Radcliffe氏はBoardGameCoとCamp_Coopの共同運営者で、クラウドファンディング情報から幅広いボードゲームレビューを発信。Professor Megはアレックスとともに協力ゲームを中心に配信するコンテンツクリエイターです。今回のレビューは2人がBGA(ボードゲームアリーナ)でマイシティを複数周プレイし、実際に24チャプターを遊び切った経験をもとに語っています。Alexはこのゲームにあまりの中毒性を感じてBGAで立て続けに3周遊んだと語るほど。

「中毒性が高くて立て続けに3周遊んだ」という言葉が全てを語っています。レガシーゲームとしてもパズルとしても、これほどコスパの良い体験はなかなかないですよ!
結論:4.5点/5点。「軽量級レガシー」という新ジャンルを作った傑作
このゲームに中毒になりました。BGAで立て続けに3周。迷わず4.5点(5点満点)を付けます。2人の評価が一致しました。
このゲームは「軽量級レガシー」という言葉がぴったりです。1チャプター30分で軽く遊べるのに、24チャプター続けてしまう中毒性がある。価格・プレイ時間・内容量・ルールの間口の広さ、どれを取っても人に勧めやすいレガシーゲームのひとつです。5点にならない理由はあとで話しますが、全体としては強くすすめられる一本です。
概要
| 参加人数 | 2〜4人 |
| プレイ時間 | 30分(1チャプター)×24チャプター |
| 対象年齢 | 10歳以上 |
| 発売時期 | 2020年 |
| メカニクス | タイル配置(ポリオミノ)、レガシー、パターン構築 |
| ゲームデザイン | ライナー・クニツィア(Reiner Knizia) |

画像引用元:Thames & KOSMOS公式サイト「My City」紹介ページ
マイシティは、各プレイヤーが自分だけの個人ボードに街を築いていくレガシー式タイル配置ゲームです。ゲームは全24チャプターで構成され、8つのエンベロープ(封筒)にチャプターが3つずつ入っています。チャプターが進むたびにルールが追加され、ボードにシールを貼って永続的に変化を加えていくことで、世界が自分だけのものになっていきます。

各チャプターの基本的な流れはシンプルです。カードをめくると数字が描かれており、全プレイヤーが一斉にその形のポリオミノタイルを自分のボードに配置します。最初のタイルは必ず川に接して置き、2枚目以降はすでに置いたタイルに隣接させます。川を1枚のタイルで越えることはできません。ボードには山・森・岩・木のマスがあり、岩のセットを覆わないとマイナス点、木は覆わずに残すとプラス点になります。タイルを置きたくなければ1点失うことで手番をパスできます。
チャプターを終えると成績に応じたボーナスとシールが配布され、ボードに貼り付けます。これがゲームのレガシー要素で、勝者と敗者でそれぞれ異なるシールをもらいます。敗者には追いつきやすくなるキャッチアップ要素、勝者にはさらなる有利が与えられます。全24チャプターを通じて最も多くの「進歩の印」を獲得したプレイヤーが最終勝者です。なお2人プレイの場合は同じゲームを2周できますが、シールを貼る永続的な変更が入るため、実質1周が基本です。
感想
封筒を開ける瞬間の興奮と、驚きが積み重なるゲームデザイン
このゲームで一番好きなのは、封筒を開ける瞬間とシールを貼る体験です。「次は何が追加されるんだろう」という期待感を持ちながら封筒を開けて、新しいルールやコンポーネントが出てきたときのワクワクが毎回あります。ゲームが進むたびに自分のボードがどんどん個性的になっていって、「このボードは自分だけのものだ」という愛着が生まれる。
チャプターごとに何か新しい要素が加わっていく設計が絶妙で、新しいルールが追加されたと思ったら、次のチャプターでそのルールをさらに深掘りする仕組みが来る、という積み上げ方が上手いです。シンプルなポリオミノ配置が、24チャプターを経て15種類の得点動機が絡み合う複雑なパズルになっていく過程は、ゲームデザインの教科書みたいな構成だと感じます。
ルールの入りやすさ
ルールも入りやすいです。第1チャプターは本当に基本的なことしかやらない。「カードをめくって、タイルを置く」それだけ。新しいルールはチャプターが進むにつれて少しずつ追加されるので、覚える量がちょうどよいペースで増えていきます。「レガシーゲームに挑戦したいけど、パンデミックレガシーはちょっとハードルが高い」という方の最初の一本として、これ以上ない入口だと思います。
接戦が続きやすいバランス設計
何度か遊んで感じるのが、終盤まで接戦になりやすいバランスのよさです。誰かが突き抜けているように見えても、ゲームが進むにつれて追いついてくることがよくあります。チャプターによって得意・不得意が違うので、ある仕組みで追いつく人が出てきて最終的に僅差になる、ということが多い。
キャッチアップメカニクムが機能しているのも大きいです。負けると次に有利になる仕組みがあるので、大差がつきにくい。「ぶっちぎりで誰かが勝ち続ける」という展開になりにくいのは、24チャプターを通してプレイ体験を均等に保つための丁寧な設計の結果です。
タイルを裏返せない、そして「負けた方が得」になる瞬間
気になる点を2つ正直に話します。まずタイルを裏返せないこと。パッチワークのような他のタイル配置ゲームでは裏返して使えることが多いですが、このゲームは形が数字の形をしているため裏返すと見えなくなってしまう。タイルを「この向きでしか使えない」という縛りは最初は戸惑います。慣れれば問題ないですが、他のタイル配置に慣れている人は少し意識して切り替えが必要です。
もう一点はゲームの途中で「このチャプターは負けた方が得かもしれない」と感じる場面があることです。チャプターによっては、敗者がもらうキャッチアップボーナスがかなり大きくて長く続くため、「内心では負けた方がいいと思いつつ、勝とうとしてしまう」という葛藤が生まれます。ゲームとして正しい行動と最適な行動がずれてしまう感覚は、ゲームデザインとして少し気になる部分です。ただそれを差し引いても、全体的にはとても楽しい体験であることに変わりはありません。
物理版とオンライン版の違い
主にBGAでプレイしてきましたが、物理版を遊んだときに「これはずっと物理でやりたかった」と思いました。自分の手元でタイルを動かしながら「この青、後でここに使えるな」と先を読んで一旦脇に置いておける。その手触りと計画の楽しさは物理ならではです。オンラインだと「あのタイルが来たら置こう」と思っていても実際に来たときには忘れてしまうことが多い。
両方で遊んでみてわかったのは、このゲームは物理版の方がより豊かな体験になるということです。とはいえ、オンラインでも十分に楽しめます。ルールを覚えるためにまずオンラインで試して、気に入ったら物理版を買うという流れもありです。


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