ボドゲレビュー『カスカディア』ソリティア系の常識を覆す秀作!

ボドゲレビュー『カスカディア』ソリティア系の常識を覆す秀作! タイル配置

本記事では、独自の批評的視点でボードゲームを語るイギリス発のYouTubeチャンネル「actualol」によるレビューをもとに、タイル配置ゲームの傑作『カスカディア(Cascadia)』をご紹介します。

actualolは、ゲームのデザイントレンドや社会的な側面まで踏み込んだ論考スタイルのレビューで知られるチャンネルです。今回の動画タイトルは「I Was Wrong(私は間違っていた)」。「パーソナルエリア(個人ボード)で遊ぶ現代のゲームは好きじゃない」という明確なバイアスを持ちながらカスカディアを遊んだ結果、その先入観をひっくり返された——というレビュアー自身の体験談をそのまま語ったレビューです。ゲームが好きかどうかだけでなく、「なぜ自分はそう感じたのか」を掘り下げる視点が、このレビューの一番の読みどころです。

はくめー
はくめー

「マルチプレイヤーソリティア嫌いのレビュアーが、なぜカスカディアを絶賛したのか」——先入観を丁寧に解体していくレビューが面白いです。Spiel des Jahres 2022受賞作!

結論:自分が好きじゃないと思っていたジャンルで、ついに「本当に良いもの」に出会った

カスカディアを遊ぶ前、このゲームが嫌いになると思っていました。「個人ボードで遊ぶゲームは嫌いだ」というバイアスをしっかり持って遊び始めたのに、気づいたら夢中になっていた。

このゲームを通じて気づいたのは、「個人ボード系のゲームが嫌いなのではなく、良いものをまだ遊んでいなかっただけだ」ということです。カスカディアは、自分がそのジャンルについて間違っていたことを教えてくれた一本です。

このゲームはアブストラクト系のゲームとして↓の記事でレビューしています!

『アブストラクト』とは?その魅力を徹底解剖!【ボードゲーム】
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まず、テーマを持たないこと。チェスの“王”や“騎士”のように名前がついていても、それは能力を覚えやすくするための記号にすぎません。そして、運の要素がないこと。サイコロもカードも使わず、すべての情報が公開され、最も上手いプレイヤーが勝ちます。

概要

参加人数1〜4人
プレイ時間30〜45分
対象年齢10歳以上
発売時期2021年
メカニクスタイル配置、トークンドラフト、パターン形成
ゲームデザインランディ・フリン(Randy Flynn)
カスカディアのタイルとトークン

カスカディアは、アメリカ太平洋岸北西部を舞台に、それぞれのプレイヤーが自分だけの自然生態系を作り上げるタイル配置ゲームです。手番にできることはシンプルで「地形タイルと動物トークンのペアを1組選んで配置する」だけ。これだけのルールで、ゲームは30〜45分で終わります。

カスカディアのプレイ風景

地形タイルはできるだけ同じ地形を連結させると最後に得点になります。動物トークンは、タイルにそのアイコンが書いてある場所にしか置けません。5種類の動物(クマ・サーモン・ヘラジカ・タカ・キツネ)はゲームごとに異なる得点カードを使い、「クマは3匹のクラスターで10点」のようにゲームごと条件が変わります。だからタイルを置くたびに「この地形を広げるか、それとも動物の配置のためのスペースを作るか」という二重の判断が必要になります。

カスカディアの完成した盤面

さらに、ネイチャートークンというリソースがあります。動物を「その場所にしかそのアイコンがないタイル」に置くと1枚もらえます。このトークンを使うと、ペアをバラバラにして好きなタイルと好きな動物を別々に取れるというルール破りができます。また表に出ている同じ動物が4枚になると強制的に全部引き直しになりますが、3枚の時点でプレイヤーが任意で引き直しを発動させることもできます。これが他プレイヤーの欲しかった動物を消せる数少ない妨害手段になっています。

感想

「個人ボード嫌い」のバイアスと、それが崩れた理由

ボードゲームを遊ぶのは、友人と「一緒に」体験したいからです。個人ボードで遊ぶゲームは、みんな同じテーブルにいるのに、それぞれが自分の作業をしているだけで終わる。友人を呼んで、ピザを注文して、ようやく着替えて来たのに、「隣にいる人と遊ぶ」のではなく「隣にいる人のそばで遊ぶ」ゲームはどうしても好きになれなかった。カスカディアはそのど真ん中にあるゲームで、だから最初から嫌いになるつもりで臨んでいました。

でも実際に遊んでみると、他のプレイヤーを気にする理由がちゃんと設計されていました。地形の一番大きなエリアのボーナスは全員で競います。欲しいタイルを先に取られたときの悔しさもある。「こっちのサーモンを先に完成させなきゃ」という焦りも生まれる。それが直接的な攻撃でなくても、テーブルを見回す理由になっています。

「詰まる感覚」がないパズルの快感

パズルゲームには2種類あると思っています。「なにをやっても間違いな気がする」と感じさせるものと、「なんとかなりそうだ」と感じさせるもの。カスカディアは断然後者です。

カスカディアはボードが固定されていないので、どの方向にも広げられる。サーモンが来なければクマに切り替える。「なにか別の手がある」という感覚が常にあって、それがゲームを楽しいまま続けさせてくれます。過度に悩まずに決断できるから、テンポよく進んで会話もできる。

タイルとトークンのペアを「取って、使う」快感

このゲームの核心的な気持ちよさは、1手番の中に「未来への準備」と「過去の計画の完成」が同時に入っていることです。地形タイルを置くとき、今ある形を広げつつ、次の動物を置くための場所を確保している。動物トークンを置くとき、何手か前から準備してきたパターンが完成する。

「すぽっとはまった」という快感が毎ターン小さく積み重なっていく。絵を描いているとき、頭の中にあったものがそのまま紙に出てきた瞬間みたいな感覚です(実際にそんな体験はしたことがないですが)。地形タイルは「すでに書いたデッサンの輪郭」で、動物トークンを置くのは「トレーシングペーパーでなぞる」作業みたいなイメージです。難しいけど、見通しが立っている。その感覚が気持ちいいです。

セットアップとルール説明の潔さ

このゲームのセットアップは「タイルを箱から出す」と「動物ごとに得点カードを1枚選ぶ」だけです。それだけ。箱を開けたくない気持ちが起きない。「今日遊ぼう」という決断がしやすいゲームは、それだけで貴重です。

ルール説明も同様で、ルールのすべてに意味があります。無駄なルールがない。コンポーネントも必要最小限しか入っていない。「これなんのためにあるの?」という疑問が出ないゲームは珍しいです。ネイチャートークンも、置く手番も、引き直しも、すべてがゲームプレイに直結していて、遊んでいてルールの美しさを感じます。

「既存のアイデアを組み合わせただけ」という批判について

「このゲームは既存のゲームのアイデアを組み合わせただけだ」という声も聞きます。確かにそうです。でも、問題は何を使ったかではなく、正しい素材を正しい方法で組み合わせられているかどうかです。カスカディアはそれができています。

このゲームを遊んだことで、「個人ボード系のゲームが好きじゃないのではなく、本当に良いものをまだ遊んでいなかっただけだ」と気づかされました。カスカディアはそれを教えてくれた一本です。

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ABOUT REVIEWER

actualol

イギリス発のボードゲームYouTubeチャンネル。ゲームのデザイントレンド・社会的文脈・プレイ体験の質に踏み込んだ論考スタイルのレビューが特徴。「このゲームが好きかどうか」だけでなく「なぜそう感じるのか」を掘り下げる視点で、ゲームデザインに関心を持つプレイヤーから支持されている。パトロン支援で運営されており、コンテンツクリエイターのBartと共同制作。

レビュー担当:actualol

actualol(YouTube / patreon.com/actualol)

今回のレビューは「個人ボード系ゲームは好きじゃない」という明確なバイアスを自ら開示したうえで遊んだ結果、その先入観が覆された体験を率直に語っている。自分の好みと設計思想の両方から語るスタイルが誠実で説得力がある。

▶ actualol(YouTubeチャンネル)

▶ actualol Patreon

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