本記事では、「ルールを気にせず楽しむ」をモットーにするイギリス発のボードゲームレビューチャンネル「BoardGameBollocks(旧:BoardGames4K)」によるレビューをもとに、ギアシステムが特徴的な傑作ワーカープレイスメントゲーム『ツォルキン:マヤ文明カレンダー(Tzolk’in: The Mayan Calendar)』をご紹介します。
BoardGameBollocksは週1〜2本のペースで4K映像のレビュー・プレイスルーを公開するチャンネルです。「遊びながら覚える」カジュアルなスタイルが特徴で、今回は2012年のリリースから8年が経過した本作が「今も遊ぶ価値があるか」という視点で評価しています。

見た目の複雑さに反して、やることは「置く」か「取る」の2択だけ! 2012年の名作が今も色あせない理由がよくわかるレビューです。
結論:4点/5点。今も通用するユニークな傑作
このゲームは4点(5点満点)。2012年のリリースから8年以上経った今も、まだこれに似たゲームが出ていないという点が一番の証明です。ギアというガジェットを批判することもできますが、そのギアが「置く・取る」という2択に無限の深みを与えているのは本物の設計力です。
ランダムな建物の引きや序盤のコーン不足など気になる点はあります。でも「このゲームがなければ体験できないもの」を確かに持っています。今のコレクションに入れる価値があるかという問いへの答えは「Yes」です。
概要
| 参加人数 | 2〜4人 |
| プレイ時間 | 60〜90分 |
| 対象年齢 | 12歳以上 |
| 発売時期 | 2012年 |
| メカニクス | ワーカープレイスメント(ダイナミック)、リソース管理、トラック管理 |
| ゲームデザイン | ダニエレ・タスキーニ(Daniele Tascini)、シモーネ・ルチアーニ(Simone Luciani) |

画像引用元:Czech Games Edition公式サイト「Tzolk’in: The Mayan Calendar」紹介ページ
ツォルキンは、古代マヤ文明を舞台に各プレイヤーが部族を率いてコーン(食料)・木材・石材・金・クリスタルスカルを集め、建物・神殿・記念碑を通じて勝利点を競うワーカープレイスメントゲームです。
メカニクス『ワーカープレイスメント』については↓の記事が参考になります!

このゲームの核心はギア(歯車)です。ボード上に5つの大型プラスチックギアが連動して配置されており、毎ラウンドの最後に全て1ステップずつ回転します。ワーカーをギアの低い位置に置くと安くコーンを払えますが、得られるアクションは弱い。高い位置まで待つほど強力なアクションが使えますが、待つ間はそのワーカーが使えません。「今取るか、もう1ラウンド回させるか」という判断が常に迫られます。

手番にできることは2択のみ。①ワーカーをギアの最低空きスペースに置く(コーンを払う)か、②ワーカーをギアから取り外してそのスペースのアクションを実行するかです。4つのギアはパレンク(コーン・木材)、ヤシチラン(金・石・クリスタルスカル)、ティカル(テクノロジートラック・建物・記念碑)、チチェンイツァ(クリスタルスカルを使って勝利点・神殿トラック)の特化エリアに分かれています。ゲームは中心ギア「ツォルキン」が1回転したら終了し、最終得点計算で最多勝利点を持つプレイヤーが勝ちます。
感想
見た目で「難しそう」と感じたら、それは騙されています
このゲームを初めて見たとき、巨大な歯車と大量のコンポーネントで「これは複雑なゲームだ」と身構えました。でも実際に説明を聞いたら拍子抜けするくらいシンプルでした。置くか取るかの2択です。それだけです。
シンプルな2択から生まれる選択の豊かさが、このゲームの一番の強みです。「いつ置くか」「どこに置くか」「いつ取るか」という問いが毎ターン積み重なって、気づけば複雑な読み合いになっています。見た目と実態のギャップがこれほど大きいゲームも珍しいです。
ギアのギミック
正直に言います。ギアがなくても成立するゲームです。「1ターンごとにワーカーを1スペース上に移動させる」というルールで同じことが表現できる。その意味でギアは「ギミック」です。
でも——そのギミックが実際に物理的に回転することで、このゲームは全然違う体験になっています。「あ、もうワーカーがそこまで来てる」という視覚的な情報が直感的に入ってくる。ゲームへの没入感が上がる。コンポーネントを塗装しているプレイヤーもいるほどの存在感があります。「ギミックだ」と言いながらも、このギアがなかったらこのゲームを遊び続けていたかどうかわかりません。
「早く取る」か「もっと回させる」か——このジレンマが楽しい
「ワーカーを早めに取って資源を稼ぐか、もう1〜2ターン回してより強いアクションを使うか」——この判断が毎ターン発生します。待てば待つほど強いアクションが使えるけど、その間はワーカーが足りなくなる。コーンを払えない状況になると選択肢が一気に狭まる。
この「時間と引き換えに強さを得る」トレードオフが、ゲームに独特のリズムを生んでいます。ロンデルに近い感覚もありますが、物理的に全員のワーカーが同じギアの上で動いているという共有感は唯一無二です。他のプレイヤーのワーカーと自分のワーカーが隣り合いながら回っていく様子を見ているだけで、次に何が起きるか想像できる。
人数スケーリングの工夫
2〜3人プレイのスケーリングが丁寧に作られています。4人未満でプレイするとき、ダミープレイヤータイルをスペースに配置してスペースを物理的に埋める仕組みです。タイルにはどのスペースに置くかが書いてあり、先に置いたものの反対に追加で置くことで、4人プレイと同じ密度を2〜3人で再現できます。
「人数が少ないとスカスカになって競争感が薄れる」という問題に対して、とてもシンプルかつ効果的な解決策です。少ない人数でも「ここが取れない」という焦りが生まれるのは、このゲームの意図的な設計がしっかり機能している証拠です。
気になる点:建物のランダム性とコーンの問題
2点だけ正直に気になる点を言います。まず建物カードのランダム性です。建物は2つのエイジに分かれてランダムに公開されますが、「食料を減らせる建物」「コーンを2倍得られる建物」など強力なものがあります。誰かがその直前に建物を取ってしまって、次に出てきた強力な建物が取れない——という展開は運次第です。次に何が出るか見えないため計画も立てにくい。ランダム性が強い要素を気にする方は注意が必要です。
もう一点は序盤のコーン不足がとにかく厳しい。ワーカーを置くたびにコーンを払い、追加のワーカーを出すほど指数的にコーンが増える。1エイジ目はコーンが何よりも重要なのに、その時期こそコーンが一番足りない——という構造的な窮屈さがあります。「そこが難しさと面白さの源泉だ」とは言えますが、初プレイで「コーンが足りなくて何もできなかった」と感じる可能性は確かにあります。


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