本記事では、ボードゲーム界の権威あるチャンネル「The Dice Tower」のTom Vassel氏、Wendy Yi氏、Chris Yee氏、Mike Delisio氏による、注目のユーロゲーム『南チグリスの旅人(Wayfarers of the South Tigris)』のレビューをご紹介します。Shem Phillips氏による三部作の第1作として登場した本作に対し、彼らがどのような評価を下したのか、その独自の魅力と戦略性に焦点を当ててまとめました。
結論:シリーズの中でも最高傑作になりえる一作
私たちが本作をプレイした結果、Mike、Wendy、Chrisの3人がそれぞれ10点満点中9点、Tomが8点という非常に高い評価を下しました。
私たちが揃って感じているのは、本作がシリーズの中でも最高傑作になりうるポテンシャルを秘めているということです。プレイを終えた後も、すぐにまたテーブルに並べたくなる、そんな中毒性のある体験でした。
ゲームの概要
| 参加人数 | 1~4人 |
| プレイ時間 | 60~90分 |
| 対象年齢 | 12歳から |
| 発売時期 | 2022年~ |
| メカニクス | タイル配置/エリアマジョリティ/モジュラーボード/セットコレクション/ドラフト/ダイスプレイスメント |
| ゲームデザイン | SJマクドナルド(S J Macdonald)/シェム・フィリップス(Shem Phillips) |

本作はShem Phillips氏による三部作の第1作目です。この三部作はダイスを中心としたメカニクスに焦点を当てています。同シリーズのデザイナーにはSJ McDonald氏も加わっています。
重めのユーロゲームであり、4人プレイだと少し時間を要します。個人的には2〜3人でのプレイがテンポよく遊べて気に入っています。

地図製作者として陸・水・宇宙を探索し、手前にカードを並べて自分だけのタブローを作り上げていくのが目的です。基本アクションはダイスを置く・ワーカーを置く・レストの3種類。ジャーナルトラックが終了トリガーで、タグセット収集が主な得点源となります。

メカニクス「タブロービルド」については↓の記事で詳しく説明しています!
コンポーネントは高品質の一言に尽きます。アート面ではシリーズ最高傑作ではないでしょうか。宇宙カードや惑星のアートは惚れ惚れする美しさです。カードを並べるタブローもパノラマ景観のようで満足感が高いですね。ただし、テーブルスペースをかなり圧迫する点は注意が必要です。
感想
キャラバンエリアが最大の魅力
一番気に入っているのが、キャラバンエリアのダイス管理システムです。ダイスの数字にタグを割り当てて強化していく仕組みは、他では味わえない独自性を感じます。「全体を底上げするか、特定の数字に集中投資するか」という悩ましさがたまりません。
たとえば2のダイスにファルコンシンボルを付ければ、特定のスポットで使えるようになりますし、ダイスを変換して数字を操作することも可能です。「今ラウンドは2ばかりだから、ここを強化しよう」といった柔軟な対応が戦略の鍵を握ります。無駄にならない仕組みがうまく作られています。
ダイスを「使う」という新感覚
ダイス運に翻弄されるのではなく、ダイスを「振った後に選択する」という感覚が最高です。ダイスをワーカーのように扱い、出た目をそのまま使うか、あるいは操作して望む目にするかを判断します。レスト時以外はダイスを振る必要がないので、常に制御下にある感覚がプレイを快適にしています。
エンジンビルドの快感
毎ゲーム異なるアプローチが試せるほどの膨大な選択肢に圧倒されます。カードや升目を追加してエンジンを強化し、できるアクションを増やし、コスト割引を発生させる……この過程がとにかく気持ちいい。自分のタブローが育っていくのを見るだけで幸せな気分になります。

『オーディンの祝祭』については↓の記事で詳しくレビューしています!
また、プレイヤー主導でゲーム終了タイミングが決まる点も好みです。ジャーナルトラックを駆け抜けて早く終わらせるか、じっくりとエンジンを回すか。単に早ければ勝てるわけではない絶妙なバランス。誰かが最強ルートを見つけると一気に終わってしまう緊張感も、本作らしい刺激です。
テーマとの一体感
探索、惑星、宇宙の地図作りというテーマが、プレイの隅々まで染み渡っています。制作陣がどれだけこのテーマを愛し、研究したかが伝わってくるようでした。得点の核が惑星や宇宙カードにあることも、世界観への没入感を高めてくれています。
たとえ最下位で終わったとしても、自分のタブローを眺めて「この星系を巡り、素晴らしい大地を築いたんだ」という達成感に浸れる。この満足感こそが、本作が単なる数字のパズルではない証拠です。
気になった点
いくつか苦言を呈するなら、アイコン量の多さは初見殺しと言ってもいいでしょう。複数の層に分かれたアイコンは視覚的に圧が強く、初回プレイ後に疑問が山積みでした。プレイヤーエイドが必須です。
また、ボード上のコスト表示が見にくいのもストレスです。いざアクションを取ろうとして「コインが足りない!」という見落としが何度もありました。
さらに、カードの影響力マーカーも少し残念です。仕組みとしては面白いのですが、支払うコストが軽すぎて、ゲーム全体へのインパクトがほとんどありません。
カード運にどう向き合うか
エリアごとのカードデッキは膨大で、ゲームごとに登場する顔ぶれが大きく変わります。惑星カードが連続して出ることもあれば、1枚も出ないこともある。この運をポジティブな「反応を楽しむ要素」と見るか、不安定と見るかはプレイヤー次第でしょう。ただ、何度も遊べば運の偏りも平均化されるので、あまり心配はしていません。
完成度の高い逸品
拡張版の噂も聞きますが、本作は単体ですでに完璧です。選択肢の豊かさ、アートの美しさ、ゲーム体験のまとまり。これら全てが高い次元で融合しており、今後も飽きることなく何度もテーブルに持ち出すことになるでしょう。
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