アークス:The Blighted Reach Expansionのレビューへようこそ!この拡張は、アークスの基本ゲームをさらに深く、複雑で、そして魅力的な体験へと昇華させます。新たなキャンペーン、非対称な役割、そして予測不能な運命が、あなたの戦略的思考と適応力を試します。この記事では、「アークス:The Blighted Reach Expansion」がどのようにゲームプレイに影響を与え、どのようなプレイヤーに最適なのかを詳細にレビューします。基本ゲームのファンも、新たな挑戦を求めるボードゲーマーも、必見の内容です!
アークス:The Blighted Reach Expansionとは?
「アークス:The Blighted Reach Expansion(Arcs: The Blighted Reach Expansion)」は、ボードゲーム「アークス(Arcs)」の拡張版です。基本ゲームのレビューを前提としており、主に拡張によって追加される要素と変更点に焦点を当てています。この拡張は、3ゲームからなるキャンペーンプレイを可能にし、大量の新しいルール、非対称な能力、そしてプレイヤーごとの目標が追加されます。
ゲームの世界観は、崩壊しつつある帝国と、新たな脅威である「疫病(Blight)」が台頭する時代が舞台です。プレイヤーは非対称な役割を担い、それぞれが独自の目標達成を目指します。目標はキャンペーンを通して追求することも、状況に応じて変更することも可能です。
主な追加要素とゲームプレイの変更点(概要)
初期配置:全てのプレイヤーは2つの帝国のクラスターからスタートし、各システムには帝国船が配置されます。プレイヤーは帝国の摂政として始まり、1人が最初の摂政となります。
帝国船:帝国船は中立の駒であり、全員が使用できますが、同時にプレイヤー間の戦闘や都市への課税を防ぎます。
自由都市と疫病:マップ上には自由都市と疫病が存在します。自由都市は、システムを支配するプレイヤーによって税金徴収や襲撃が可能です。疫病は倒すのに2ヒット必要で、他のプレイヤーの船のように移動を妨げます。
イベントカードとサミット:標準のアクションカードにイベントカードが追加され、リードカードのアクションをコピーできますが、危機や勅令を引き起こす可能性があります。イニシアチブを持つプレイヤーはサミットを招集できます。
勅令(Edicts):プレイヤーの役割や最初の摂政に関連する新しいアクションです。
サミット(Summit):プレイヤー間で取引や交渉が可能になります。また、特定のプレイヤーは帝国を離れて無法者になったり、摂政がいない場合に帝国を再建したりできます。
危機(Crisis):危機が発生すると、マップ上の全ての疫病が、同じセクターにいる船にダメージを与えます。新しいコートカードの中には、危機時に効果を発動するものもあります。
運命(Fates)システム
この拡張の核となるのが「運命(Fates)」と呼ばれる役割システムです。プレイヤーには「提督(Admiral)」や「執事(Steward)」といった称号が与えられ、それぞれがユニークなカードデッキを持っています。これらのデッキは、新しいコートカード、法カード、またはゲーム全体に影響を与える新しいルールや勅令を追加します。
各アクトでは、プレイヤーはキャラクターに関連する目標を達成することでトラッカーをゼロに減らすことを目指します。成功または失敗に応じて、異なるカードが与えられ、コートに追加されます。
失敗した場合:目標に失敗すると、プレイヤーはBカードの運命に変更する必要があります。
成功した場合:目標に成功した場合、現在の運命を続けるか、選択肢は少ないもののB運命を選ぶことができます。
二度目の失敗:二度目の運命に失敗すると、通常はC運命カードへの変更が強制されます。
キャンペーンの勝利条件
通常、キャンペーンは3つのアクト全体で最も多くのパワー(勝利点)を集めたプレイヤーが勝利します。しかし、プレイヤーがC運命を選んだり、第2アクトで失敗してC運命になったりした場合、勝利条件が大きく変わります。
C運命のプレイヤー:C運命のプレイヤーは、究極の目標を持っており、それを達成すると、C運命でない他のプレイヤーの勝利を無効にします。複数のC運命がいる場合、目標を達成したC運命の中で最もパワーが多いプレイヤーが勝利します。
C運命がいない場合、またはC運命が目標達成に失敗した場合:C運命が場にいないか、全てのC運命が目標達成に失敗した場合、最もパワーが多いプレイヤーがキャンペーンに勝利します。
アークス:The Blighted Reach Expansionのレビュー
「アークス:The Blighted Reach Expansion」は、キャンペーンというよりは「非常に長いアークスのゲーム」のように感じられます。ゲーム間でボードの状態がリセットされないため、リソースやボード上の位置、建物などが次のゲームに直接引き継がれます。この継続性により、一気通貫でプレイするのが最も良い体験とされています。
運命の変更とゲームバランス
運命が変更される際、プレイヤーが現在のボード上の位置に完璧に合った運命に当たったり、逆に目標達成が非常に困難な運命に当たったりする可能性があります。強制的に変更される場合は2つの運命から選択できるため、良いポジションに当たる可能性が高いです。これは、先行するゲームでの準備が報われると考えることもできますが、他のプレイヤーにとっては盛り上がりに欠ける結果となることもあります。レビューアの経験では、C運命に変更された際、先行ゲームの準備が完璧にハマり、最終ゲームで圧倒的な勝利を収めてしまい、他のプレイヤーにとっては興ざめな結果になったとのことです。
複雑性と学習曲線
「The Blighted Reach Expansion」は、「アークス」とは異なるゲームのように感じられます。基本ゲームが「シャープでクリーンでスピーディなデザイン」であるのに対し、この拡張は「遅く、濃密で、複雑で、ごちゃごちゃしている」と評されています。これは、帝国、イベントカード、無法者、疫病の仕組み、勅令、危機、サミット、帝国評議会といった大量の新しい基本ルールを学ぶ必要があるためです。さらに、プレイヤーが増えるほど、各プレイヤーの非対称な役割が新しいカードやルール、勅令を導入するため、複雑性が増します。
完全にルールを理解するまでは、他のプレイヤーの機会や自分自身の進捗の機会を見落とす可能性があるため、プレイヤーは苦しむかもしれません。しかし、この複雑性は決してネガティブなものではなく、他に類を見ない体験を提供し、その価値は十分にあると評価されています。各運命は興味深い目標、野心、能力を持っており、それらの相互作用は無限であり、物語やドラマを生み出します。
交渉システムの課題
グループで唯一「しっくりこなかった」要素として、サミット後の交渉システムが挙げられています。アークスは基本的にゼロサムゲームであるため、持っているものは目標達成のため、または次のラウンドのために役立つものであり、対戦相手と交換したいものではないと感じられたためです。交渉は、自分は何かを失い、相手は何かを得るという二重の損失になるため、あまり意味を見出せなかったとのことです。
また、サミット中に実行できる「一般的ではないアクション」が、イベントカードによって頻繁に発生するサミットのたびに、ゲームの進行を遅らせる原因となっていました。基本ゲームの優れたプレイヤーエイドとは異なり、拡張には共有のプレイヤーエイドが1つしかないため、新しいルールを覚えるのがさらに困難になっていることも指摘されています。
運命システムの多様性と再プレイ性
運命システムは非常に多様であり、そのデザインは優れていると評価されています。24種類の運命があり、A運命とB運命には複数のアクト分のカードがゲームに注入され、影響を与えます。これらは非常に実験的で革新的であり、運命を発見し、他のプレイヤーがプレイするのを見たり、自分自身で新しい運命に遭遇したりすることは純粋な喜びです。運命同士の相互作用は無限の再プレイ性をもたらし、どのキャンペーンも全くユニークなものになるでしょう。
また、目標達成に失敗しても、新しい運命がアンロックされ、ゲームがどのような展開を見せるのかというポジティブでエキサイティングな要素に転換される「失敗の先に進む(fail forward)」デザインも高く評価されています。
2人プレイでの課題
小さな不満点として、運命の中には2人プレイキャンペーンで目標が調整されないものがあり、他のプレイヤーから得点するタイプの目標が達成しにくい場合があります。2人プレイキャンペーンも非常に楽しいものの、より多くのプレイヤー数でプレイする方が、追加されるカオスによってより輝くと考えられています。
総評
「アークス:The Blighted Reach Expansion」は、まさに拡張がかくあるべし、という作品です。コンテンツと提供される体験の点で、これほど印象的な拡張を見つけるのは難しいでしょう。しかし、これはすべての人に推奨されるわけではありません。基本ゲームのアークスはルールが比較的簡単で、ゲーム状態の操作に複雑さがありましたが、「The Blighted Reach Expansion」は全く違います。複雑で、ごちゃごちゃしていて、時には混乱を招き、プレイ時間も大幅に増えます。
そのため、基本ゲームのアークスは好きでも「The Blighted Reach Expansion」は嫌い、あるいはその逆のプレイヤーもいるでしょう。この拡張は、「ルート(Root)」を好む人が「オース(Oath)」を嫌い、あるいはその逆であるという比較と同様に、非常に「オース」に近い体験を提供します。
レビュアー自身は、「The Blighted Reach Expansion」を「非常に優れた、無限に再プレイ可能な体験」として非常に高く評価しており、多少の弱点があっても、今後何年にもわたってプレイし続けることを楽しみにしています。
提供されたレビューは、単にネガティブな側面を指摘するのではなく、購入を検討している人が知っておくべき点を明確に伝えることを意図しており、全体的な評価には影響しないとされています。
この詳細なレビューが、「アークス:The Blighted Reach Expansion」を検討されている方の一助となれば幸いです。基本ゲームのレビューもぜひチェックしてみてください。
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