この記事では、ボードゲーム系YouTubeチャンネル「Board Game Wales」のAdam Porterが公開した「2人用ボードゲームのメカニクスTOP10」動画をもとに、2人専用ゲームというジャンルの多様性と設計上の面白さを詳しくご紹介します。

ゲームデザインに興味を持つAdamが「2人専用ゲームにはどんなメカニクスが多いのか、なぜそれは2人専用なのか」を探求した内容です。ぜひご覧ください。
はじめに-なぜ「2人専用」にした方が面白いのか
2人専用ゲームというジャンルを改めて眺めてみると、「なぜこのゲームは2人専用なのか」「3人以上にはなぜ向かないのか」という問いに対してそれぞれ明確な答えがあることに気づきます。
頭を使う抽象ゲームは人数が増えると意思決定の空間が爆発的に広がりすぎる、非対称ゲームは相手の能力を覚えられる範囲内で成立する、推理ゲームは1対1の読み合いに最もスリルがある——こうした設計上の必然性が2人専用ゲームの面白さを支えています。
今回はそのような観点から、2人用ゲームのメカニクスをTOP10形式でご紹介します。
2人用ゲームの魅力:メカニクス別に見るTOP10
第10位:アブストラクト——抽象的なストラテジーゲーム
2人用ゲームの象徴的存在とも言えるのがアブストラクトゲームです。チェス・チェッカーなどが代表例です。これらのゲームは完全にランダム性を排除しており、すべての決断が純粋な戦略と戦術から生まれます。
盤の反対側に到達する・陣地をつなぐ・エリアを支配する・チェーンを形成するなど、目標の形は様々ですが本質は変わりません。
3人チェスを試した友人の話では、ボードを見るだけで気分が悪くなるほど複雑で、プレイヤー全員が選択肢の多さに頭を抱えていたとのこと。
こうした深い思考が必要なゲームは、2人専用にとどめておくべき理由がはっきりしています。
第9位:アクション系——体を使う対決
ビリヤード・スヌーカー・ダーツのような競技を思い浮かべると、スポーツには本来から2人対決のものが多いことがわかります。ボードゲームの世界でも「クロキノール」のようなデクスタリティ(器用さ)ゲームはこのカテゴリーに入ります。


『クロキノール』は↓で詳しくレビューしています!
「キューブクエスト」は小さなプラスチックキューブを指で弾いて相手の駒を飛ばす、まさにスポーツ対決の延長線上にあるゲームで、他のどんなゲームとも似ていない独特の楽しさがあります。


画像元:https://schatzi.jp/2017/05/16/cube_quest/
第8位:トラディショナルカードゲーム系
「ゲームが苦手なパートナーと一緒に遊ぶなら何がいい?」と聞かれたとき、真っ先に思い浮かべるのが「ロストシティ」です。普通のトランプで遊べそうな雰囲気を持ちながら、カードを特定のスロットに並べて得点を競うこのゲームは、2人用ゲームの入口として最高の一作です。

引用元:https://jellyjellycafe.com/games/lost-cities-the-original
第7位:エリアマジョリティ——陣地を奪い合う緊張感
「バトルライン」は、各スロットに出したカードの合計が相手より高ければそのスロットを制圧する、ポーカー的なエリア争奪ゲームです。ロストシティーズとよく似たコンポーネントながら、「自分の得点が相手の出方に直接影響される」という点が大きく異なり、純粋な勝負としての面白さが増しています。

引用元:https://jellyjellycafe.com/wp-content/uploads/2013/10/battleline.jpg
このメカニクスは「スマッシュアップ」や「トワイライト・ストラグル」のような大型ゲームにも拡張できますが、多人数になると計算が複雑になりテーブルスペースも増えるため、2人で遊ぶのがやはりベストです。
第6位:非対称ゲーム——異なる能力が生む深い読み合い
2人専用ゲームには非対称性(両プレイヤーが異なる能力を持つ)がよく合います。
「トワイライト・ストラグル」や「スター・ウォーズ:リベリオン」は双方がまったく違うカードデッキを使う大型の非対称ゲームですが、相手のデッキを把握するまでに学習コストがかかる点が難しさでもあります。
一方でブルーノ・カタラ氏のデザインの「ラプトル」は非対称ゲームの理想的な形を示しています。恐竜の母と赤ちゃんを操るプレイヤーと、それを捕獲しようとする科学者のプレイヤーという非対称な構図の中で、互いのアクションカードがたった9枚ずつしかないため、ゲーム開始前に相手の全手段を把握できます。

引用元:https://jellyjellycafe.com/games/raptor
第5位:推理ゲーム——相手の考えを読む緊張感
隠れた情報を推理し合う推理ゲームは、2人対戦と非常に相性がよいジャンルです。「スコットランドヤード」は本来多人数ゲームですが、2人でプレイするのが最も洗練された体験になります。


引用元:https://www.kawada-toys.com/brand/game/catalog/81016/
第4位:縮小版ボードゲーム——大作を2人用に凝縮する
大型の多人数ゲームを2人専用に縮小する手法も、2人用ゲームの大きなカテゴリーです。ウヴェ・ローゼンベルクがこのアプローチを多用しており、「ル・アーブル:内陸港」「オール・クリーチャーズ・ビッグ・アンド・スモール(アグリコラの2人版)」などが代表例です。


引用元:https://hobbyjapan.games/le_havre_tip/


引用元:https://hobbyjapan.games/agricola_all_creatures_big_and_small_big_box/
第3位:アーミー・ウォーゲーム——軍団同士の一騎打ち
ミニチュアゲームや戦争ゲームは本質的に「軍対軍」の構造を持ち、2人対決に自然と収まります。「ブラッドボウル」「ウォーハンマー40K」「メモワール’44」「インペリアル・アサルト(スカーミッシュモード)」などがその代表例です。
スカーミッシュゲームはシナリオキャンペーンよりも1回きりの一発勝負の方が好みで、「俺の軍対お前の軍」という直接対決の興奮がこのジャンルの醍醐味です。3人以上になると「どちらの軍が誰のもの?」という状況になり、ゲームとしての純度が下がってしまいます。
第2位:コレクティブル(収集型)ゲーム
マジック:ザ・ギャザリングやアンドロイド:ネットランナーに代表されるコレクティブルゲームは、試合前のデッキ・軍団構築そのものがゲームプレイの一部となっている点が最大の特徴です。
最近プレイした「スター・ウォーズ:デスティニー」はランダムブースターの楽しさがあり、ゲーム自体も面白く、シンプルなデッキ構築から対戦に入る体験には魅力があります。

第1位:セットコレクション&ドラフト
2人用ゲームのメカニクスとして最も頻繁に使われ、最もしっくりくるのがセットコレクション(組み合わせ集め)とドラフト(選択と取り合い)の組み合わせです。
「ドラフト」という言葉はスポーツのチーム選びに由来し、ボードゲームでは「世界の七不思議」「スシゴー!」のように手札から1枚選んで次のプレイヤーに回す仕組みが有名ですが、2人でカードを行き来させるだけでは面白さが半減してしまいます。そのため2人専用ゲームでは次のようにドラフトの形が工夫されます。
「世界の七不思議:デュエル」はカードをテーブルに広げ、取ることで他のカードにアクセスできるという独自のドラフトシステムを採用しており、とてもクリーンでうまく機能しています。

引用元:https://hobbyjapan.games/7_wonders_duel/
「フンギ(Fungi)」はキノコを集めてセットを完成させる、繊細で美しい2人用ゲームです。「ジャウル」はバトルラインやロストシティーズと並ぶほどの完成度を持つ傑作で、セット収集の楽しさを純粋に体験できます。


引用元:https://hobbyjapan.games/fungi/


そして「パッチワーク」——テトリス型のピースをドラフトして自分のボードに敷き詰めながら、マイナス点を避けつつボタン(得点)を稼ぐこのゲームは、単純なドラフトの仕組みで驚くほど豊かな体験を生み出します。



画像引用元:Lookout Spiele公式『パッチワーク』紹介ページ

『パッチワーク』は↓で詳しくレビューしています!
さいごにーーまだ探求されていない2人用ゲームの可能性
このTOP10を振り返りながら感じるのは、2人用ゲームというジャンルにはまだ開拓されていない領域が多く残っているということです。
ワーカープレイスメント・ダイスプレイスメント・同時アクション選択(ラプターはその試みですが)・オークション・パーティーゲーム的な要素・推理系ワードゲーム(コードネームのような)——これらを2人専用の形式で成立させる方法はまだ十分に探求されていません。
2人用ゲームのデザインはまだまだ豊かな可能性を秘めています。



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