デッキ構築レースゲーム『エルドラドを探して』拡張も含めてレビュー

デッキ構築レースゲーム『エルドラドを探して』拡張も含めてレビュー デッキ構築

この記事では、動画「The Top 100 Board Games of All Time – The Quest for El Dorado」の字幕内容をもとに、デッキ構築レースゲーム『エルドラドを探して』(拡張「英雄と呪い」込み)を詳しくレビューします。

ここではその内容を元に、家族でも遊べる分かりやすさと、ゲーマーを唸らせる意地悪でスパイシーな駆け引きの両面を、できるだけ生々しい手触りのまま言葉にしていきます。

結論:何度も卓に出したくなるレースゲーム

『エルドラドを探して』は、デッキ構築の気持ちよさと、レースゲームの焦りと笑いが最高のバランスで混ざり合った作品だと感じます。探索カードを買って効率を上げたい気持ちと、今すぐ一歩でも先へ進みたい焦りが、常に胸の中で引っ張り合います。そのうえ、他プレイヤーのコマが絶妙に道をふさぎ、近道を横取りされ、呪いタイルで思い切り足を引っ張られます。

そんな意地悪な展開を、「くそっ」と笑いながら受け止められるタイプの人にとって、これはかなり危険な中毒性を持ったゲームです。

重くて偉大で歴史的に重要なゲームとして挙げられがちな『アグリコラ』よりも、「単純にまた遊びたくなる楽しさ」で勝ると感じます。システムの影響力や深さではなく、今この瞬間に誰かと遊びたいかどうかで比べたとき、自分の中では『エルドラドを探して』を上に置きたくなります。そのくらい、「軽やかさ」と「意地悪さ」と「ドラマ」が、ちょうどいい温度でまとまっている一本です。

概要

参加人数2~4人
プレイ時間30~60分
対象年齢10歳から
発売時期2020年~
メカニクスデッキビルディング/ハンドマネジメント/モジュラーボード/ドラフト
ゲームデザイン ライナー・クニツィア(Reiner Knizia)

『エルドラドを探して』は、ライナー・クニツィアによるデッキ構築+すごろく型レースゲームです。プレイヤーはジャングルや川、村などが描かれたタイルで構成されたルート上を、自分の探検隊コマを進めながら、誰よりも早く黄金都市エルドラドにたどり着くことを目指します。

手札は4枚。カードには「ナタ」「コイン」「オール」などのアイコンが描かれており、対応する地形のマスに進むために使います。たとえば、ナタ1が描かれたカードで、ジャングルの「ナタ1」のマスに進む、といった具合です。必要アイコン数が多いマスほど近道になっていることが多く、「遠回りだが楽な道」か「きついが速い道」かを選びながら進んでいきます。

使わなかったカードや、移動に使わず残ったカードは、そのままお金として新しいカードの購入に使えます。共通のマーケットには限られたカードが並び、誰かがある山を買い切ると、初めて新しい種類のカードを追加できる仕組みになっています。

拡張「英雄と呪い」を入れると、途中の洞窟に入り込んで一時的なボーナスや呪いタイルを取ったり、他人のコマを動かすような強烈な効果も加わり、レースがさらにカオスで派手な展開になります。

※引用元:アークライト公式『エルドラドを探して(新版)』商品ページ

感想

デッキ構築と盤面の「二重の読み」が気持ちいい

『エルドラドを探して』で一番痺れるのは、手札の中身と、盤面に広がるルートの両方を同時に見なければならないところだと思います。デッキ構築型ゲームでは、つい「理想のエンジン」を作ること自体が目的になりがちですが、このゲームでは盤面が容赦なく現実を突きつけてきます。「この森を抜けるにはナタ3が必要」「この川を渡るにはオール3が必要」と、ハードルが具体的なマスとして目の前に並びます。

しかも、自分のデッキが「遠回りルートには強いけれど、近道には弱い」といった偏り方をしていると、選択はさらに悩ましくなります。今あるカードでなんとか無理して難所を突破するのか、一度諦めて別ルートに回るのか。「デッキの構成」と「地形の構造」が完全に噛み合う瞬間は、本当に快感ですし、うまく噛み合わないときの焦りも含めて、レースゲームとしての温度がちょうど良いと感じます。

洞窟と呪いが生み出す、「寄り道の誘惑」と「自爆の快感」

拡張「英雄と呪い」で追加される洞窟と呪いタイルは、このゲームの性格を一段と尖らせてくれる存在だと感じます。洞窟に入れば、一時的な強力ボーナスや便利な効果を持つタイルを拾えます。しかし、そのためにはコースから少し外れて寄り道をする必要があります。

実際のプレイの様子を想像してみると、洞窟に取り憑かれたように何度も出入りを繰り返し、「気付いたら他のプレイヤーから大きく遅れていた」という状況が目に浮かびます。それでも、何枚ものタイルを抱えて終盤に穴から飛び出し、一気にショートカットを決める瞬間には、「今までの寄り道がすべて報われる」高揚感があります。

呪いタイルの中には、他プレイヤーのコマを後ろに動かしたり、自分と相手の位置を入れ替えたりと、かなり激しい効果も含まれています。せっかく自分が呪いをかぶって切り開いた近道を、最後の一枚で横取りされるような展開は、腹が立つのに笑ってしまうレベルの理不尽さがあります。インディ・ジョーンズばりの「罠をかいくぐってきたのに最後で他人に持っていかれる」感じが、テーマ的にもぴったりです。

ブロッキングとゲートが生む、レースならではの意地悪な緊張感

『エルドラドを探して』は、物理的なコマの位置関係が、そのまま駆け引きに直結するタイプのレースゲームです。細い通路の先に高コストのマスがあり、そこを突破しようとしているプレイヤーの前に、わざと立ち止まってふさぐことができます。自分はその手番であえて弱い手札を全部捨て、新しい手札を引き直すだけにしても、相手はそのマスに入れず足止めされます。

2人プレイでは、専用のルールで「相手をいじめるためのコマ」が追加され、さらにこのブロッキング要素が強化されます。まさに「箱いっぱいの意地悪なカエルが詰まったゲーム」という表現が似合います。

さらに秀逸なのが、途中に置かれるゲートタイルです。先頭を走るプレイヤーは、このゲートを突破するために余分なコストを支払わなければなりません。これが「先頭を走るほど燃費が悪くなる」小さなハンデになり、終盤での逆転の芽を残してくれます。同時に、このゲートタイルはタイブレークのときに勝敗を分けるリソースにもなるので、「本当に今ここで割ってしまっていいのか?」と、自信と不安が揺さぶられる作りになっています。

家族でも遊べるシンプルさと、ゲーマーを刺す「意地悪さ」の両立

ルール自体は驚くほどシンプルで、「サイコロを振ってコマを進める」タイプのすごろくに慣れた家族にも教えやすいです。やることは基本的に、「カードを出して進む」「残りのカードで買い物をする」だけです。テキストもほとんどなく、アイコンも直感的なので、言語依存もかなり小さいです。実際にドイツ語版でも難なく遊べていたことからも、その分かりやすさがよく伝わってきます。

しかし、一緒に遊ぶメンバーがデッキ構築に慣れていると、このゲームの顔つきは一気に変わります。「どのルートを想定したデッキを組むか」「いつエンジン作りをやめて、本気でゴールを目指すか」といった判断が、かなりシビアになってくるからです。自分だけ理想のエンジンづくりに没頭していると、気がつけば他のプレイヤーがゴール直前にいて、そこから必死で追いかけても届かない、という展開も普通にあります。

「アグリコラより上」に置きたくなる、純粋な楽しさの強さです

最後に、ランキングの話に触れておきたいと思います。『アグリコラ』は、歴史的な重要性やデザインの影響力という意味では間違いなく偉大な作品です。それでも、自分の中で「今どちらを卓に出したいか」と問われたとき、『エルドラドを探して』を上に置きたくなる気持ちは、とてもよく分かります。

『エルドラドを探して』には、難しい計算やリソース管理よりも、「うわ、今そこで塞ぐの!?」「その洞窟まだ行くの!?」といった素直な感情の揺れが詰まっています。ゲームの終盤、誰の手札に「最悪で最高の4枚」がそろっているのか、テーブル全体が息を呑んで見守るあの空気は、数字では測れない楽しさです。ランキングのロジックがどうであれ、こういうゲームを上の方に置きたくなるのは、ごく自然なことだと感じます。

まとめ:笑って怒ってまた遊びたくなる、黄金色のレースゲーム

『エルドラドを探して』は、「あと一歩」をめぐる喜びと悔しさを、とことん味わわせてくれるレースゲームだと思います。デッキ構築で理想を追いかけたくなる欲と、今目の前の一歩を踏み出したい衝動。その両方を抱えたまま、ジャングルと川と洞窟を進んでいく時間は、本当にあっという間です。

家族でわいわい遊ぶこともできますし、ゲーマー同士で本気のブロッキングと呪い合戦を楽しむこともできます。軽さと意地悪さとドラマのバランスがこれほど気持ちよくかみ合った作品は、そう多くありません。レースゲームやデッキ構築が少しでも好きなら、『エルドラドを探して』は一度は体験しておきたい一本だと強く感じます。

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