今回紹介させていただく動画は「How to design a FLICKING board game! *Top 10 Mechanisms*」です。
日本ではいわゆる「おはじき」、英語圏では「フリッキングゲーム」とされる、指で弾いたりバランスをとったりするジャンルのボードゲームの仕組みを整理・考察した内容です。

この動画では、おはじき系ボードゲームがどんな流れで発展してきたのかを振り返りながら、設計で効いてくる10個の仕組みを整理していました。
この記事では、動画の内容をもとに、おはじき系ボードゲームの歴史の流れと、設計で押さえたいポイントを順番にまとめていきます。
おはじき系(フリッキング)ボードゲームはどう広がってきたのか
動画の出発点になっているのは、ビー玉遊びです。円の外にビー玉をはじき出す感覚や、先手を決めるために狙って弾く感覚は、今のゲームにもそのまま残っています。
ビー玉遊びから始まり、テーブルサッカー、レース系を経て、2000年代以降に現代的なおはじき系ボードゲームが一気に広がったという流れです。
インドのキャロムでは、ディスクを角のポケットに入れる感覚が磨かれました。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AD%E3%83%A0
そこからクロキノールのような作品につながり、さらにテーブル上でスポーツを再現する方向では、1929年の New Footy や、その後に改良された Subbuteo のような作品が出てきます。

画像引用元:RIGOLER公式ショップ『クロキノール』商品ページ

『クロキノール』は↓で詳しくレビューしています!
その後は、レースを再現する PitchCar のような作品が人気を集め、2000年代のボードゲームブームの中で、おはじきの仕組みがもっと自由に使われるようになりました。
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ここから先は、単に弾くだけではなく、何を弾くか、何を目的にするか、どんな効果を持たせるかでゲームごとの個性が大きく変わっていきます。
おはじき系ボードゲームで重要な仕組み6選
① まず決めるべきは「何を弾くか」
最初に効いてくるのは、プレイヤーが何を弾くのかです。ディスクは滑らかで予測しやすく、クロキノールのような作品では気持ちよく伸びていきます。一方で、ダイスはもっと不安定で、思った通りに進みにくい代わりに、止まった面をゲームに使えます。
ほかにも、ポーカーチップのようなコマ、曲がったり跳ねたりできる ICECOOL のペンギン、磁力でくっついたり反発したりするの磁石を使用したゲームもあります。素材と形だけで、操作感もドラマもかなり変わります。


引用元:https://hobbyjapan.games/icecool/
② 勝ち方を「除去」にするかで緊張感が変わる
よく使われる目的のひとつが除去です。相手のコマに当てて場外へ出したり、重要なコマを落としたりして勝ちを狙う形です。
Pitch Out では相手のキャプテンを場外に出すか、ほかのコマをすべて減らしてキャプテンだけにすれば勝ちです。キューブクエスト(Cube Quest) でも大事なのは王様のダイスで、相手の王を盤外に落とせば決着します。どのコマを守り、どのコマで攻めるかが見えやすいので、対戦の熱さを作りやすいです。


画像元:https://schatzi.jp/2017/05/16/cube_quest/
③ 「正確さ」を競う目標も相性が良い
もうひとつ大きいのが、狙った場所に止める正確さを競うタイプです。穴の近くに寄せる、ボウルの上に止める、中央の得点エリアに入れる、コート内に返すといった形です。
除去系:相手を落とす、押し出す、重要コマを守る
精度系:狙った場所に止める、通す、入れる
サフラニート(Safranito) はスパイスのボウルを狙ってチップを止めるゲームですし、Set & Match はテニスのように相手コートへ返してアウトを誘います。

引用元:https://www.mobius-games.co.jp/Zoch/Safranito.html


引用元:https://hobbyjapan.games/set_and_match/
ICECOOL では、鬼役は相手に当てることが目標ですが、逃げる側はドアをくぐって魚を取ることが目標で、同じゲームの中に違う精度目標が入っているのも面白いです。
④ テーブルの端をどう扱うかでもゲームの性格が決まる
おはじき系で避けにくいのが、コマがテーブル外へ飛んでいく問題です。これは単なる事故にもできますし、ルールの中心にもできます。
カタコンベ・コンクエスト(Catacombs Conquest)には外へ飛び出したコマを受ける柵があり、クロキノールには溝があります。
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逆に Pitch Out では、相手を端から落とすこと自体が主目的です。端を事故として処理するのか、勝ち筋として使うのかで、プレイ感はかなり変わります。
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⑤ 特殊能力を入れると、ただ弾くだけで終わらなくなる
特殊能力は、器用さだけに勝負が寄りすぎるのを防ぎつつ、ゲームごとの個性も作ってくれます。
Pitch Out には、触れただけで倒せる暗殺者、二回動けるランナー、味方をかばうガードなどがいます。Cube Quest でも、選ぶキューブの組み合わせで毎回違う戦い方になります。カタコンベ・コンクエストにいたっては、ヒーローやモンスターやボスがそれぞれ別の能力を持っていて、フリッキングとアビリティ戦の両方が立つ設計になっています。
⑥ 可変セットアップは長く遊べる
能力の違うチームを選ぶだけでも変化は出ますが、シナリオ形式まで入ると別ゲームのように表情が変わります。
Cube Quest や Pitch Out は、どの能力を持ち込むかで対戦の形が変わりますし、カタコンベ・コンクエストはシナリオそのものが大きな変化を作ります。
一回の気持ちよさだけで終わらず、何度でも違う弾き方を試せるのが、この仕組みの強さです。
どんな作品から入ると楽しみやすいか
軽く遊びたいならICECOOL、持ち運びやすさを重視するならPitch Out、真っ向勝負の緊張感を味わいたいなら Set & Match です。
もう少し変わった感触を求めるならサフラニート、しっかり深く入り込みたいならカタコンベ・コンクエストが向いています。おはじき系は見た目の楽しさだけでなく、どこに狙いを置くかで驚くほど幅が出るジャンルだと改めて感じます。
まとめ:おきじき系ボードゲームは「弾く気持ちよさ」を設計で育てるジャンル
おはじき系ゲームは、器用さだけで決まる軽い遊びに見えますが、実際にはかなり設計の幅があります。何を弾くのか、何を狙わせるのか、表裏や特殊能力や地形をどう効かせるのかで、作品の顔つきは大きく変わります。

この動画の良いところは、おはじき系ゲームをただの器用さ勝負として扱わず、目的、情報、地形、能力、シナリオまで含めた設計の話に広げていたところです。弾く気持ちよさをどうゲームとして育てるかが、ここではかなりはっきり見えてきます。
おはじき系ゲームをこれから遊ぶ人にも、作ってみたい人にも、入口としてかなり見やすい内容でした。


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